黒の日


 歩くわたしの前を、尾の短い小太りの猫がこちらには一瞥もせずタタタと横切って行った。

 黒猫だった。


 少し行ったところに、今どきの密集建売住宅一軒が建つほどの広さに一面芝生が植わっており、そこにはただ、手作り風の短くはない年月を思わせる犬小屋があった。
 その脇に真っ黒い塊があった。
 黒い犬だった。
 顔はまったく見えずこちらに尻を向けるようにして丸まっていた。ピクリとも動かないので死んでいるかと思った。


 また少し歩くと、緑色のパーカーをフードを被るように着た背の高い男子小学生が向こうから来た。
 緑色のフードの下には緑色のキャップのひさしが見えた。
 そしてひさしの下は、のっぺらぼうだった。
 真っ黒いのっぺらぼうだった。
 目も鼻も口もない。
 すれ違うあいだ、ずっとしっかり見つめてしまった。
 黒いのっぺらぼうは、パーカーのポケットに両手をつっ込んで、ただまっすぐに歩いて行った。


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isoginchaku

Author:isoginchaku
名古屋市緑区在住。たった一人の弁当屋。
只今休業中。

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