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ふれあい

 買い物に歩いて出かけました。

 大き目の交差点の所に、おじさんが立っていました。私はおじさんの方に向かって坂道を上る感じで歩いていました。
 おじさんは、黒い髪を七三分けにし、近い白い開襟シャツに黒の半ズボン、白い靴下にスニーカーといういでたちで、なぜか上ってくる私の方をずっとじっと見ていました。
 信号が変わって、おじさんは渡れるようになったのに、私を見たまま動きません。
 昼間11時前。ちょっと怪しい人かなと思いました。私はおじさんからやや距離を取りつつ、おじさんも行こうとしていたと思われる横断歩道を渡りました。
 渡り終えてもう一度信号待ちに止まりました。
 気配がします。
 振り返ると、おじさんが私の後ろに立っていました。
 と思ったら、なんだか「ウーウー」言い出しました。私は緊張しました。

 おじさんは更に私に近づき、「ファ~」とか「ウー」とか言いながら、自分の左手のひらを出して、右の人差し指で何か文字を書きました。
 まず私は、おじさんの手のひらが紫だったのにびっくり。しかし落ち着いてよく見ると、それは大きな痣のようでした。火傷の痕かもしれません。
 落ち着いてきた私は、おじさんが手のひらに書いている文字が、「北」だということを理解しました。書き順が違っていたので、解りにくかったのです。
 「ああ、北ね」と私が言うと、おじさんはべらべらと今度ははっきり中国語だとわかる言葉を話しました。そしてあっちこっちを指差します。「北はどっち?」と言っているようです。私は「多分こっち」と、そうだと思える方向を指差しました。おじさんは何か、納得いかなかったのでしょう。何度も北、北と手のひらに書いて、私を見、何やらベラベラ喋ります。あっちやこっちを指差します。そして、南という字も書きだしました。
 喋りつづけるおじさんに「ちょっと待って」と私は言い、リュックサックから紙とペンを出しておじさんに渡しました。
 ものすごく真面目な顔で受け取ったおじさんは、「北ー南」と書いて私を見、「アーアー」と言いました。私は「北と南でしょう」と言ってうなずきました。おじさんはもう一度同じことを書き、その後、「平針南」と書きました。針の字は、日本のとはちょっと違いましたがわかりました。
 「ああ、平針ね。それならこっち」私はこんどは確かな顔をして、おじさんに言えました。「でも歩くのは大変だよ」と言っておじさんから紙を取り、「遠」と書きました。「歩くの無理かもよ、大丈夫かなあ」と言いました。
 おじさんはそこで初めて笑顔になりました。ほんとに明るい顔だった。最初見た時、怪しいと思ってしまったのを謝りたくなる笑顔でした。そして私にもわかる中国語「謝謝」と言って、私の手を両手に取り、ぶんぶんと振りました。おじさんの手はちょうどよく湿っていました。
 「迷ったらまた誰かに訊いてね」と私は言いました。おじさんはわからなかったろうと思いますが、笑っていました。
 手を振って別れました。
 しばらく歩いて振り返ると、おじさんもこちらを見ていました。私たちは高く手を上げて、もう一度手を振り合いました。



 朝のラジオで、他人とつながることが寿命を延ばすと言っていました。
 日頃つながりの殆ど無い自分ですが、今日はつながりではないけどふれあいがありました。人間、中国人のおじさんと。
 おじさんはちょっと口が臭ったなと思いました。
 言葉だけでなく、手までふれ合っちゃたなと思いました。


 
 

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Author:isoginchaku
名古屋市緑区在住。たった一人の弁当屋。
只今休業中。

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