花がすすむ 水をゆっくり

 桜は散る姿も美しいと言われますが、花弁が色褪せてゆくのは他の花と同じように少しばかりせつなくもあります。


 桜が終わりかけてタンポポだなあと地面を見ていたら、いつの間にか花水木が花開いていました。白いのと薄い紅色のが満開。うかうかしていたという気分になりました。

 こんなにどんどん花がすすんでいくと、自分がおっつけるスピードを越えて季節もどんどん先へ行ってしまう感じがして、ちょっと落ち着かない。寒い冬待ち焦がれていた春は、けっこう早足で過ぎていってしまうなあと思うのは、勝手でもあり、常日頃いつ死んでもいいと言いながら心の奥底で死に近づきたくない見えない自分がいるからなのかも、と思ったりします。


 ゆっくりがいいです。


 村上春樹の『アフターダーク』を読みました。
 他の作品は二度読みしてもいるのもあるのに、2004年発行のこれを手に取ったのは初めて。

 時に飛ばし読み、流し読みしつつ、3晩で読み終えました。


 

「僕の人生のモットーだ。ゆっくり歩け、たくさん水を飲め」




 登場人物の一人である学生、彼はバンドでトロンボーンをやっていて父は犯罪歴があり母は幼い頃他界。
 これは彼が主人公とも言える19歳の女の子に言ったセリフ。

 「ゆっくり歩け、たくさん水を飲め」 
 村上春樹はジョギングしてマラソン大会に出ているけれど、ゆっくり歩いて、たくさん水を飲んでいる気がする。

 この言葉を聞いた女の子はしばらく会話したあと、「たくさん歩いて、ゆっくり水を飲めばいいのね」と言います。

 ゆっくり水を飲む人を私は確実に一人覚えています。それまで他人がどういう感じでペットボトルの水を飲んでいるか気にして見たことが無かったのですが、その人の飲み方は、なんとなく目に入りました。

 その人はかなり年上の男性でしたが、普段乱雑だということもなく、ですから水を飲む動作とのギャップがすごくあったわけではない。けれどもその、水をゆっくり飲むところには、何か穏やかに好感の持てるものがありました。グラスやコップではなく、ペットボトルというのがひとつここではポイントかもしれません。飲み終わればゴミになってしまうペットボトルと飲み方の丁寧さ。


 
 「ゆっくり歩いて、ゆっくり水を飲む」とても簡単にできそうなこれは人生のモットーたりえるか。

  
 雨しとしと降り続く日。電線にとまる一羽の鳥を眺めながら、とりあえず、ゆっくり淹れた珈琲をゆっくり飲みつつ過ごしています。




 

 



 

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

isoginchaku

Author:isoginchaku
名古屋市緑区在住。たった一人の弁当屋。
只今休業中。

最新トラックバック

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード