贅沢な夜 (和食の店・よ兵)

   山茶花  山茶花の咲く11月の終わりに・・・

  和食のお店「よ兵」に夜のお食事をいただきに行きました。
  お弁当のお客様でもあるYさんからこちらのお店を教えていただいたのは、1年程前のこと。ずっと気にはなっていましたが、行きたい気持ちがしっかり高まったこの時に、うまく予約も取れたのです。そして今回は「ヨヒョウはオレに任せろ!」と「よへい」をどうしても「よひょう」と言ってしまうセロリ師匠のおごり。(何を隠そう、セロリ師匠は貧乏です。常日頃は畑で取れる南瓜や芋、大根ばかりを食べておられます。しかし、ここぞと言う時、「オレはなあ、やる時はやるんだ、まいったか!」と言って景気よくおごってくださいます。「金持ちより貧乏人におごられる方がどんなに楽しいかわかるようになれ。」とは師匠の教訓の一つです。前置き長くなり)心弾ませお店に向かった。
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     看板よ兵

 普通の住宅の1階部分をお店にしてやっておられる様子。知らなければホントにわからない。

夜の部が始まる5時半に店の前に着いたら、ご主人がちょうど「営業中」の札を出しに出てこられた。予約の電話で聞いた声と、日本料理、「よ兵」という名から想像していたより、随分と若い方だ(40歳位?)。しかもでかい人だったので、軽い衝撃。

  「中へどうぞ。」とでかいご主人に静かな声で言われて、一番奥のお座敷まで進む。清潔感のある店内には、もう何か美味しそうなよい香りが漂っている。

黒い木の敷物 番茶
ご主人が最初に持ってきてくれたのは温かい番茶だった。そして、何も言わずに出て行かれた。
  湯飲みに注いでとりあえずお茶をすする。こういうコースの和食のお店で始めからお茶が出てくるのは珍しい。6人がけ程の大きさの白っぽい机の上には、乗せられる料理を待つ黒い板があるのみで、「本日の献立」や「お酒のメニュー」も何にも見当たらない。  

  「BGMはオルゴールか」などと思っていると・・・

   八寸
    「前菜」
  夜は一人で切り盛りしていらっしゃるらしいご主人が運んできてくれたのだが、お皿を黙って置くと、そのまままた何も言わずに出て行かれようとした。「え!?」と思って声をかける。お皿の上のこれらは何ですか。でかいご主人は、もう一度立て膝になり静かに教えてくれた。
  「だし巻き卵、春菊とシメジのおひたし、つぶ貝、たらこ、粟麩の田楽、海苔巻きです。」
  
  おひたしとつぶ貝がワタシは特に気に入り、おひたしはおつゆも飲みきった。だし巻きは甘めの味付けで小さくカットしたのが二切れ。海苔巻きの具は、マグロとイカ。炊いた鱈子は普通(濃過ぎなくてよい)だったが、これからを更に期待させてくれるに十分な、始まりの一皿だ。
 
     お造り よ兵
   「刺身」
  「かんぱち、まだか、えびです。」
  ここからは、何も言わなくても説明してくれるようになったご主人。「まだか」というのは初めて聞いたが、「スズキのことです。出世魚なのでスズキになる前の前の時期ですが、そうは言っても70cm位にはなります。」なんてことまでやっぱり静かーな声で教えてくれた。

  「うまい。」刺身大好きのセロリ師匠が言った。北海道産の師匠は、幼少の頃は自ウニやホタテなど海で取って来て食べていた人だ。味わう舌も確か。ワタシにも新鮮なのがよくわかる美味しさだった。ワタシはかんぱちはあまり好きな方ではないのだが、つるっと食べられた。初体験の「まだか」は、変わった舌触り(シコシコという感じに近い)で淡白。海老は小ぶりだがトロンとして甘味があった。
  「ヨヒョウの主人、ぐっさんていうやつに似てるな。」
  刺身の美味さに喜ぶ以上に、こちらのご主人の静かな物腰がいたく気に入ったらしいセロリ師匠が言った。「きっとあまり人と喋るの好きじゃないんだな。そんで一人静かに繊細な料理を作っているんだ。いい感じだなあ。」

  ところでこの日、師匠は美味しいお酒を飲むのも楽しみにしていた。しかし机の上にメニューは無し。ご主人も飲み物のことを何も言わない。「酒飲まれるの嫌で、酒置いてないのでは」とワタシたちは話し合った。「お酒ありますか?なんて聞いたら、あの静かなぐっさん急に怒り出すかも知れんぞ。」
  そう言いながらもセロリ師匠は、次の料理を運んできてくれたぐっさんに聞いていた。
  あっさり「あります。」ということで、お酒を待ちながら「鯛しんじょう」をいただく。
     鯛しんじょう
  ほんの少し形を残している鯛の身が入った上品なはんぺんという感じ。おつゆにうっすら脂がういており、しっかりした味付け。

    義侠と大関
  お酒は、まず冷で「義侠」。その後燗で「大関」
  どちらも甘めのお酒。
  
     カマスのからすみ焼き/黄身寿司
   「焼き物・カマスのからすみ焼き」
  「これは凝ってるなあ。それにこんなカマス食べたことない。」と師匠は何度も言ったが、「カマスは淡白な魚」という今までの概念を覆すように、ふっくりと脂ののったカマスだった。からすみはコクとよい塩味を添えている。香りも微かに。
  写真手前に見える四角いのは「黄身寿司」ワタシはこれが新鮮だった。卵の白身の層、黄身の層、海老が重なった上から甘酢のゼリーで覆われている。とても爽やか。蓮根や銀杏の素揚げも美味しい。
そして、ほとんどいつも思うのだが、ワタシは出てくる料理と一緒に白いご飯が食べたくなる。お酒を飲まないときは特にだ。ご飯食べたらお腹がいっぱいになってしまうのだろうけど・・・。 

  次のお料理は、蒸し物。柿色の器がいい。  えび芋饅頭お椀
えび芋まんじゅう
  「海老芋まんじゅう」
  「中にうなぎと海老が入ってます。」ぐっさんの表情は、だんだんと柔らかくなっているよう。

  これは特に女性に好まれそうだ。外側の部分はもっちりしていて口に入れると溶けていく。蒸す前に揚げているのか香ばしさもある。うなぎは柔らかく海老はプリっとしている。餡は少し甘めだがいい味。

     とり貝の酢の物
   「とり貝の酢の物」
  「替鉢」というらしい。とり貝の歯応えがいい。

      揚げ物/海老ポテト、けんちん揚げ
   「揚げ物」
  「このつゆ美味い。」とセロリ師匠は天つゆに喜んでいた。海苔巻きみたいなのは「けんちん揚げ」と言って、豆腐、野菜と白身魚が巻かれている。

  お腹はいっぱいになってきた。そろそろ終わりに近づいて・・・・・
    
    味噌汁五目御飯・
  ご飯はとても軽く盛られている。具がもう少し多い方がワタシは好きだ。やや味が濃い。ご飯も甘いのはあまりワタシの好みではない。味噌汁は味噌の種類か今まで味わったことのない味と香り。味噌汁椀も小さい。お漬物は普通。

     水菓子
  最後にフルーツ(水菓子)が出た。器もフォークもきっちり冷えている。柿は毎年もらう石巻のおばさんの柿のほうがおいしい。デザートがもう少し「お!」というものがあるといいなと思うが、一人で全部手のかかる料理を作っているんだから仕方ないかな。
  
                           座敷の花
  
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  「ヨヒョウのぐっさん」は、最後玄関先まで見送りをしてくれ、「おやすみなさい。」と言ってくれた。

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  なかなか簡単には食べられないような手のかかったとても美味しい料理をいただき、気持ちもお腹も満足となった・・・のは、実はワタシだけだった。
  肉体労働を一日していたセロリ師匠のお腹の方は、十分に満たされなかったのだ。確かに男性にはちょっと足りないと言われる量かもしれない。「もうちょっとなんか食いたい。寿司食いたい。」と師匠が言い続けるので、やむなく近くの回転寿司に入った。店内に入った瞬間、「さっきまでいた空間とは別世界に来た。」と感じた。一皿目の一口食べた師匠は言った。「全てにおいてヨヒョウはいかに繊細だったか改めてよおくわかるな。」結局寿司はほんの少しで帰ったのだった。

  本当に「よ兵」の「繊細さ」は、素晴らしいとワタシも思う。京都の割烹と比べると(京都の方が倍近い値段だったが)味付けは、全体的に甘め。名古屋の味覚に合わせているのかもしれない。器はよ兵の方が楽しめる。何が負けてしまうかと考えると、「勢い」「力強さ」「迫力」みたいなものか。一皿一皿の料理もきれいだが小さくまとまっている感じなのだ。「わあ」はあるけど「おお!」がない。
  けれど、もの静かでおとなしいというのが「よ兵の色」なのかもしれない。師匠も言うように、ご主人の感じがよく出ている。
  いずれにしてもあれだけの料理を作っている「よ兵のぐっさん」は力のある人だと思いました。
(それから、 「ここの料理に合わせるなら甘くない酒がいいだろうな。酒はちょっと残念だったな。」と、帰り道に師匠談。)
  
   「よ兵」の夜のお食事は、4,200円。献立は月替わりだそうです。
  お昼は2,500円でとてもお値打ちな内容らしいですが、多分夜の方が静か(この日のお客はワタシたちを入れて2組だけ)なので、ワタシは夜がいいなと思います。一層「よ兵」が楽しめると思います。

  追記 「ヨヒョウの主人はやっぱり白鵬(横綱力士の)に似ている。白鵬の兄さんだ。ぐっさんじゃなかった。」と、セロリ師匠から至急の連絡入りました。

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isoginchaku

Author:isoginchaku
名古屋市緑区在住。たった一人の弁当屋。
只今休業中。

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